債権者にとって、債権回収の局面で抵当権や根抵当権は以下のような大きな力を発揮します。
①他の法的手段に比べて時間、手間がかからず、費用が少なくてすむ
「担保に入れた不動産を競売にかけてその売却代金から支払ってもらう」ことを、
抵当権や根抵当権を使わないでやろうとしたら、
まず、「お金を返してほしい」などといった訴訟を起こして勝訴判決や和解調書を取り、
その上で不動産競売の申立てをする、という手続きを踏まなければなりません。
ただでさえ、訴訟の準備、実行には手間ひまかかるし、
相手方が争ってきたらなおさらです。しかも絶対に勝訴できるとは限りません。
しかし、抵当権、根抵当権であれば、訴訟を起こさなくても
競売を申し立てることができるのです。
訴訟を起こさなくてすむので、時間と費用が通常訴訟に比べると少なくすみます。
②債務者に倒産されてしまっても、抵当権、根抵当権の不動産は担保として確保される
相手方が倒産(破産、民事再生など)をされてしまうと、
通常の債権はそのほかの債権者と平等な扱いで、
相手方の財産を債権額に比例して配分を受けることになります。
しかし、抵当権、根抵当権による競売の売却代金から優先して、
自分の債権の支払いを受けることができます。
もちろん、他の債権者に自分の抵当権、根抵当権を主張するには
登記をしておくことが必要です。
③債務者側にとってプレッシャーになる
支払いが順調なときは何でもないのですが、いざ滞ったときに
不動産を売られてしまう、というのはプレッシャーに感じるので
(特にマイホームを守りたいという気持ちは強いので)
それを支払いの動機に結びつけられれば有効です。
実は、抵当権や根抵当権は、貸金債権だけを担保するわけではありません。
商品の売買代金や請負代金などを担保させることも可能です。
このような債権者にとって便利な抵当権や根抵当権ですが、
債務者側にとっては心理的抵抗があるのでなかなか利用できないが通常です。
ですので、お金を貸す際や、商品を供給するとき、 支払いを猶予(待ってあげる)とき、
支払いを一部免除(カット)してあげるときなどに、
交渉の材料として「その代わりに抵当権、根抵当権をつけさせてください。」
と持ち出す価値はあると思います。
不動産なので、価格下落のリスクや、
競売しても買い手がつかなくて換金できないリスクもありますが、
それらを差し引いても強力な武器であることには間違いありません。